No.5 座ったシカ
岸本真弓 本ホームページのWMO clubのコーナーにあるように先月Field Note75号が発行された。この号から、原稿をお寄せいただいた方への心ばかしのお礼は図書カードとなった。これまではテレホンカードだったのだが、これだけ携帯電話が普及したご時世、テレホンカードではな・・・と考えてのことである。その栄えあるWMO図書カード第1号に登場したのが「座ったシカ」である。 昨年11月6日、兵庫県のニホンジカ糞塊密度調査の時だった。兵庫県民ならよく知る大屋町明延鉱山の近く、メッシュ番号5235-7432のことであ…
No.4 択捉島調査雑記<その1.衛生害虫に気をつけろ>
片山敦司 公衆衛生の世界で人にとっておじゃまな虫は「衛生害虫」と言う。この1年、蚊やハエはもちろん、スズメバチやダニにお世話になったりしてちょっと衛生害虫対策に関心が向いた。今回はフィールドでの防虫対策のお話。 この6月、北方領土の択捉島に行く機会を得た。自然度の高い土地だからさぞかし・・・と思いながら択捉島の上陸経験者の手記を読むと初夏は島の内陸部でブユが柱をなしているという。ヒグマも虫があまりに多いので風通しのよい海岸部に移動しているのだというから並じゃない。準備中の調査団の中でもそのことが話題に出て、防虫…
No.3 三角点探訪<その3>
岸本真弓 鳥取県日野町/岡山県大佐町・新見市界4等三角点(1034.9m) 2002年5月11日雨のち曇り 日野町三土の集落から標高差500mほどをひたすら登る。嫌な予感は的中し、着いた県境尾根にはササが密生していた。その上、県境だから尾根道がついているかもという淡い期待も見事に裏切られた。伐採のせいか何のせいか森林が成立せず唯一面ササ原となり、ほんとにササだけならまだしも尾根とおぼしき辺りには膝位の位置からこれでもかと横に枝をはったマツが、まばらではあるが行く手をふさいでいた。ということは、天気が良ければ絶景な…
No.2 三角点探訪「2001年秋徳島の巻」 <その2>
<その2>徳島県木頭村/上那賀町界3等三角点旭(源蔵のノ窪723.3m) 2001年11月1日曇り 那賀川を堰き止める小見野々ダムの上流約1.5km、海川谷川の流れ込む海川口橋のたもとより登り始める。小ピークである4等三角点本村(491m)を過ぎ、ただただ登って木頭村と上那賀町の町界の尾根にたどり着く。標高差50m、直線距離で500mほど行くと、私が「へのへのもへじピーク」と呼んだ源蔵ノ窪がある。地形図にいくつも示された小さな丸はピークなのか、それとも窪なのか。尾根とされるその辺りは幅100mから最大250m…
No.2 三角点探訪「2001年秋徳島の巻」<その1>
<その1>徳島県日和佐町/相生町界2等三角点赤松(鉢ノ山621.1m) 2001年10月31日晴れ 日和佐町遠野の集落から登り始め、4等三角点栗作(412.0m)を通り、日和佐町と相生町の町界の尾根へたどり着く。そこからは常緑広葉樹とスギ成林の中をゆるゆると登り、北斜面に広大なスギ幼齢林を見ながら最後の30mを登り切るとそこに、2等三角点赤松(621.1m)がある(写真)。地形図では鉢ノ山となっている。伐採された北斜面は見晴らしがよく、3kmほど先の相生町大久保の集落が見える。大久保の集落は那賀川に面した集落であ…
No.1 炭焼き小屋の老人
白井啓 昨年の秋、栃木県のある町にサルの調査に出かけた。採石場とその工場がならぶ道路を川沿いにのぼっていくと、両側に植林地で覆われている山々が続いた。はじめて訪れる町だったが、ある意味で、日本各地の山村で見慣れた風景がそこにもあった。それでも、最後の集落を過ぎると、尾根の上方にはきれいな紅葉の森が見えてきた。さらにさかのぼると、ようやくとサルに装着してある電波発信器の受信音が聞こえてきた。 サルを発見したのは、植林地帯の中に残る広葉樹林だった。植林しにくかったと思われる急斜面である(写真)。サルたちは、主にカラスザ…