研究員によるフォトブログ

No.50 三角点探訪再訪“最低最悪”

2008年05月21日

岸本 真弓 鳥取県日野町/岡山県大佐町・新見市界 四等三角点「三土」(1034.9m) 2008年4月21日晴れ 「県境尾根は最低最悪。特に(8)、(9)(県境尾根部の区域番号)はもう二度と行きたくないくらい。」と書いてある2002年5月11日の調査票。どんな場所であったかは、調査雑記No.3「三角点探訪<その3>」を。  そこを再び訪ねることになった。 “最低最悪”の(8)、(9)区域はあのとき発見した林道を使ってショートカットするコースに変更されており、お天気に恵まれたこの日、ほんとのと…

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No.49 迷い猪

2008年05月14日

清野 紘典 1月徳島県のとある山村、いつものように軽快に軽バンを走らせていると、車道前方に中型の動物が歩いているのが見えた。 小太りの犬かと思い近づくと、それは10kgほどの小さな猪だった。 しばらく遠目で様子を見るが、全く逃げる気配がないので車から降りて背後から接近してみる。逃げない。後を尾行するとようやく状況を飲み込んだ様子。ブヒブヒと小走りで逃げ出した。猪はしばらく車道や側溝を右往左往した後、疲れ果てたのか立っているのがやっといった状態で足が痙攣しはじめた。 と、そこへ軽トラで中年男性が通りかかった。事態を一…

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No.48 タヌキの皮算用

2008年04月23日

岸本 真弓  恒例の春シカ調査で京都の山を歩いていた.シカの調査なのだが,タヌキのタメ糞が気になる.見つかれば思わず足を止め,かがみ込んでつんつんし,写真を撮ってしまう.  今年あるタメ糞場で小さな小さな“クツ”を見つけた.長さは1.5cmほど,幅は0.5cmほど.隣には母の毛か?  特に猟期明けのこの時期,タヌキたちはハンターの残したシカの残滓にありつける.小さなタヌキにとって大ご馳走に違いない.食べても食べてもまだまだある・・・といった具合か.  京都府の中北部の指定市町ではハンター1名につき1日3頭の狩猟が可…

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No.47 仕事の道具(その2)~防熊のイージス(盾)~

2008年04月19日

片山 敦司 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第8条但し書きにおいて認められた種以外の動物の捕獲は同法違反となる。しかし『わな』による捕獲の場合、生態・形態の似た動物が誤って捕獲されるのを完全に防ぐことはできず、予防策を尽くしても稀に錯誤捕獲が発生する。錯誤捕獲において違法性を問われないようにするためには、捕獲者は個体を速やかに解放しなければならない。  だが、ツキノワグマが捕獲された場合の解放は容易ではない。イノシシやシカ用に製造された『はこわな』や『くくりわな』は、ツキノワグマの強靱な力により破壊される可能…

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No.46 仕事の道具(その1)~注射筒の話~

2008年04月12日

片山 敦司 現場で使われる道具について、何回かに分けて雑文を書くことにする。今回は我々が医療器具として最もよく使う「注射筒(シリンジ)」の変化の話題である。 資源の大量消費・大量廃棄の時代から循環型社会への転換を図る政策が『3R』(廃棄物の発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle))のキャッチフレーズの元に推進されている。ディスポーサブル(使い捨て)注射筒も写真1のように、廃棄物の発生抑制のためより薄く・より軽くなった。 医薬品メーカー『テルモ』社は、ホームページで『環境への取り組み…

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No.45 動物たちの表情

2008年04月10日

加藤 洋  野生動物の生態調査に欠かせないことの一つに、電波発信機によるラジオテレメトリー調査がある。電波発信機を装着するためには、動物を生きたまま不動化(麻酔)する必要がある。また、我々はツキノワグマの放獣業務も請け負っているため、ワナに捕獲されたクマに麻酔をかけることがある。  麻酔をかけられ、我々の手中に落ちた野生動物。そのとき、野生下では決してみることの出来ない彼らの表情を見ることができる。普段、動物の不動化に用いている薬品は、動物の中枢神経を麻痺させ、意識・痛覚の消失を得ることができる薬品である。その成分…

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No.44 転んだ後の杖

2007年11月14日

  岸本 真弓 毎年恒例の秋のシカ調査.今年不覚にも初日に膝を痛めてしまった.登りはいいのだが,下りがきつい.もともとバランス感覚など皆無,絞ったとはいえ骨身についた人一(1.5?)倍の荷物がぐらつけば膝はどんどん悪くなる.そういう時に頼りになるのは「杖」である.  杖は歩いている最中に見つける.身の丈に合うことはもちろんだが,他にもいろいろと自分の好みがある.あまり固すぎず少し柔軟でしなる方が私は好き.真っ直ぐでなく,下から50cmくらいのところと上部高さ90cmくらいのところに微妙な湾曲があると言うことない.な…

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No.43 寂しき大道芸人

2007年10月12日

岸本 真弓  私たちの仕事は,動物の生態や行動の特性を踏まえて保護管理を推進していくことにある.最近外来種も扱うようになり,在来生態系からの排除のためにも,彼らの生態と行動は重要なポイントだ.  自動撮影装置は行動特性を知るに有効なツールである.映像はさまざまなことを教えてくれる.アライグマは手が使える.手を使うために,後ろ足で長時間立つことができる.バランス感覚もバツグンだ.手は上向きにも下向きにも,外向きにも内向きにも,前向きにもすることができる.両手で物を掴むこともできるし,片手だけで物を掴むこともできる. …

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No.42 2006年クマ嵐のあと

2007年04月26日

横山 典子  京都北部の常緑広葉樹林の中で糞塊密度の調査中でのことです.林の中を歩いていると,アカガシの枯れ枝がやたらに落ちていました.最初はあまり気にとめず,風が強いところなんだろうくらいにしか,考えていませんでした.しかし,落ちている枝があまりにも多く,気になってきました.まさか,クマがアカガシを食べるとも思えないし・・・と思いながら,上を見上げると,クマ棚らしきものがありました.いやいや,クマ棚なわけがない,アカガシでしょ?と疑いの目で幹に近づいてみると,ありました,クマの爪痕!  シカの糞塊密度調査は,ただ…

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No.41 自虐的サル発見

2006年12月06日

名矢 結香 長野県でのサル追跡でのこと。 サル達は林縁からトウモロコシやリンゴを狙っている。私は車から観察をしていた。 すると、成獣のオスが何か気に食わなかったのか、口を開けながら近寄ってきた。ここまではよくあることだ。しかしこの後、このオスザルは見たことがない行動をした。 犬歯を見せながら目を剥き、そして右手に力をこめて…..ガブリ。 噛み付いたのはなんと自分の右手。 まるで、「近寄ってきたら、お前もこの右腕みたいに噛んじゃうぞ」とでも言いたげだ。もちろん力一杯噛んでいる訳ではないけれど、こんな威嚇の仕方は初めて…

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No.40 苦しい時の空(飛行機)頼み

2006年10月25日

片山 敦司  ツキノワグマは移動能力が大きいので,標識個体が地上での追跡で行方不明となることが稀ではない.車で侵入できるありとあらゆる林道を探索し,ついには歩いて山に登り,アンテナを振っても電波が受信されなかった時の虚脱感はあまり経験したくないものだ.  そんな時に,航空機による探索が可能になると,千載一遇,地獄に仏,渡りに船の思いがする.これまでに,ヘリコプターやセスナ機での探索を経験したが,どの調査でも不明個体を発見するなど良好な結果を得ている.コストは高いが,それなりのリターンはある調査なのである.  航空機…

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No.39 衛生害虫に気をつけろ!part2

2006年09月29日

片山 敦司  本シリーズNo.4「択捉島調査雑記1」で衛生害虫対策を語った割に心構えができていなかったというお話。  夏の低山に入る時は、長袖+長ズボンと防虫スプレーは必須で、裾がぴったりと締まった服装が必要と心得ている。だが、つい暑さに負けて服の締めが緩くなったり、滝の汗にスプレーの効果が失われても、あまりに暑さに「やってられっかい!」と投げやりになっていたりする。・・・ということで、7月某日、ダニにやられました。  ツキノワグマのヘアトラップを笹藪の中に設置する作業をしていて、気がつくと作業服の上に大量のダニが…

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No.38 クマの家宅訪問

2006年09月15日

片山 敦司  西日本では,初秋に集落周辺へのクマの出没頻度が高まり、対策を求められることも多い.住宅地への出没や果樹の食害など問題はいろいろだが,その中でも緊張感の高い対策を迫られるのがクマによる「住居侵入」である。  農家の倉庫や山小屋の炊事場のように,食べ物の香りがある場所ならば納得するが,玄関から役場の建物に入ったり,食品と無関係の工場に入り込んだりするクマが何を考えているのかわからない.クマにしてみれば,人間の作った構造物も森の一部であり,コンクリートの建物もへんてこな洞窟にしか見えないのかも知れないが. …

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No.37 小さな来訪者たち

2006年09月08日

加藤 洋  ツキノワグマのヘアトラップは、ハチミツでクマを誘き寄せ、有刺鉄線でクマの体毛を絡め取るというものだが、クマ以外にも様々な生物が訪れる。  ハチミツに集まってきたハエを捕食するクモ。さらに、虫たちを食べに来たのだろうか、カエルもいる。小さな食物連鎖が出来上がっている。クワガタがハチミツをすすりに来ている事があるが、彼らはハチミツを囲うネットを破ってしまうようだ。困った奴だと思う反面、何だかワクワクしてしまう。…だが、よくよく観察すると、口元がかなりグロテスク。小さい頃は素手で捕まえて喜んでいたのに、今は見…

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No.36 GPSテレメの回収*

2006年08月21日

瀧井 暁子  WMOでGPSテレメを使い始めたのは2000年頃からです。当時回収した首輪から得られたデータをみて、人力による追跡の限界を感じたものです。  その後、シカやクマなどにGPSテレメを装着する機会がたびたびあり、今や野生動物調査には必要不可欠な道具の一つとなっています。ところで、最近の目下の問題は、首輪に取り付けた「脱落装置」が作動しない、ことです(データを首輪に蓄積するタイプでは、首輪ごと回収しないといけないため、脱落装置をとりつける)。もちろん脱落装置が作動するものもありますが、作動しないで、高額な首…

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No.35 金髪碧眼

2006年08月02日

岸本 真弓  2年前のことなのだが,5月21日りっぱなメスザルが移動式の檻に入ってきてくれた.ちょうど生まれてまもないアカンボウが一緒だったが,有り難く発信機を付けさせていただいた. アカンボウは麻酔で眠るお母さんにしがみついて離れない.そのままとりあえず作業を進め,一段落したところでアカンボウに目をやるとなんとも切ない目でこちらを見ていた. 虹彩がグレーだった. そのためか憂いをおびているように見える.あまりにいとおしくそっとなぜてみた.泣き出すこともなく,顔をおかあさんに埋めた.そよかぜにゆれる毛が輝いて見えた…

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No.34 「クロ」の憂鬱

2005年12月22日

泉山 茂之  「クロ」はどこにでもいる雑種の飼い犬で、元気盛りな1才半のオス犬である。でも、ただのイヌではない。約3週間の特訓の後に、今年の夏にデビューした、「モンキードック」第1号だからだ。 サルの群れが来ると、クロの鎖は外され、サルたちに向かって疾走する。クロにとって、自由に山野を駆け巡る時が幸せな瞬間であることは、誰が見てもすぐにわかる。サルたちは、蜘蛛の子を散らすように逃走する。クロのおかげで、リンゴも野菜も、サルによる被害は全くなくなった。食べきれない収穫に、家族の誰もが、心からクロに感謝している。  た…

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No.33 ヘアートラップ調査の楽しみ

2005年11月24日

森本 英人  この夏、長野においてヘアートラップ調査というものを行いました。これは、ある地域に何箇所かバラ線を張り、クマの毛を採集して、DNA分析を行い、個体数推定を行うものです。  長野ではトラップを100箇所設置し、約10日に一度毛の採集を行いました。一口に100箇所といっても、これはなかなか大変な作業です。今回は3チームで動いていたので、1チーム約33箇所。すべての箇所で、バラ線をじっくり見てクマの毛を探すので、さすがに疲れます。  しかし、そんな疲れが吹っ飛ぶ瞬間があります。それは、やはり熊が来ていたときで…

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No.32 旅するサル

2005年11月04日

清野 紘典  9月下旬、早朝ツンと鼻につく秋の気配を感じながらH県S市に生息するニホンザルの群れを調査に出かけました。調査のため群れのメスザルには発信機がつけられており、それにより群れを識別・探索することができます。メスザルは群れから生涯出ていくことはないのでメスザルに発信機を付ければ群れを特定することができます。S市には現在特定されている群れが2群いますが、その日はそれらを含む3群をS市周辺で広域にわたり探索することにしていました。  S市に入りしばらく車を走らせると、発信機からの信号で識別している一つの群れが近…

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No.31 糞採集紀行

2005年10月18日

森光 由樹  長野県に生息しているニホンザルのミトコンドリアDNAを分析したところ、今まで5つのタイプが見つかりました。しかし、採取したDNAサンプルは捕獲個体を中心に採取したものだけでした。 捕獲の難しい地域に生息しているサルのDNA情報は未だに不明です。そこでDNAサンプルが不足している地域、北アルプス後立山、針ノ木岳周辺を探索してサルの糞拾いに行ってきました。糞にはその個体の細胞が混じっています。DNAを抽出し分析することが可能です。  長野県大町市JR信濃大町駅から車で約30分で扇沢に到着します。扇沢は富山…

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