研究員によるフォトブログ

No.309 街路樹の爪痕

2018年10月17日

海田明裕   とある商業施設の駐車場を歩いていると、ふと違和感を覚えて目がとまった。 街路樹の膝丈あたりのところの樹皮がバリバリにはげている。 よく見るとその木の他の部分や添え木にも細い爪痕が無数についている。最近のものから数年は経過して逆に盛り上がった傷になっているものもあった。 明らかにケモノの仕業。 しかし、そんなに美味しそうな実のなる木には見えない(帰って調べたらおそらくシマトネリコ)。     上を見ると実の代わりにセミの抜け殻がかなりの密度でぶら下がっている。写真では上手く写せなかったが、わた…

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No.308 影絵のキツネ

2018年09月28日

岸本真弓 西方の島で、イノシシの擦り跡の木の根元になにやら懐かしいものを見た。薄気味悪く感じるほどのリアルな細い腕の先には、そう影絵のキツネが。数を数える虫(フォトブログNo.65)のように、山の中には人間にだけ見えるものがときどきある。そのとき、ちょっと嬉しいが、自然の中のそんな自分に違和感も持つ。 それにしても、久しぶりに自分でもやってみたが、私の手ではキツネになるだろうか。  

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No.307 Rice bran lip

2018年09月12日

海老原寛 本日ご紹介する商品はこちら!『Rice bran lip』です! まず注目すべきはこの色!ナチュラル感のあるベージュ色となっております!自然な色だからこそ、様々なシーンでご使用いただけます! さらに、フェルラ酸やγ-オリザノールなどの成分が配合されており、美容効果はバツグン!米ぬかの山に口を付けるだけで、しっかりと付着する手軽さも魅力です!あなたの魅力を引き出すこと間違いなし! 気になるお値段ですが、今だけなんと0円!通常は製造数が限られるところ、メーカーの努力により、近くの精米機に併設されているヌカハウ…

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No.306 長~いヌタ場

2018年09月02日

岸本真弓 もとは何だったのか、わからない。しかし、今はヌタ場だ。 長い。とても長い。そしてずっとイノシシが擦った痕が続いている。一度や二度ではないなめらかさだ。水中歩行訓練のように細長いヌタ場を擦りながら進んだのか。それとも大家族が一列に並んで擦ったのか。ここの主が日を変え、気分を変えてあちこちで擦ったのか。真相は泥の中だ。    写真1:手前                写真2:奥(まだ先まで続く)

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No.305 花葬

2018年08月21日

海老原寛 クサギの花に埋もれたモンキアゲハ。もう動かない。生涯を終えたようだ。彼(彼女)の亡骸は未だ美しい様相を保ち、花に囲まれているその様は、まるで人間の葬式のようであった。亡骸の周りには、他のモンキアゲハがひらひらと飛び回る。もう動かない彼(彼女)にお別れを告げているのであろうか。 命が尽きてもそのまま地面に落ちず、花の上に舞い落ちることができたからこその美しくも儚い風景。それでも時が経てば地面に落ち、土へと帰っていくのだろう。その様もまた美しい。

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No.304 血痕

2018年08月02日

岸本 真弓 西方の島でイノシシ調査をした。この島は海中火山の噴火によってできた島で、土はミネラル分の多い火山灰土の赤土である。林床を覆うハート型の葉に血痕を思わせる赤い泥が飛び散っている(写真1)。その後をたどると(写真2)、りっぱなヌタ場が現れた(写真3)。 倒木が表土を剥がした痕のヌタ場は天蓋付きの浴場であり、そこに座るイノシシは開いた花の中に現れた『親指姫』を彷彿とさせる。この島には、数年前、初めてイノシシが泳いで渡ってきた。島最大の動物の出現に、島の人は戸惑っている。

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No.303 尾根の消失(行く手を阻むもの8)

2018年07月18日

岸本真弓 紀伊半島は台風の被害を受けやすい。ある年のシカの調査で尾根を歩いていたら、全面に赤茶けた裸地が広がった。進むべき尾根が、、、ない(写真1)。どうやら、斜面崩壊が発生したようだ。その対策として工事が実施されていた。   写真1 見事に何もかもなくなった一帯を見ていると、ここが何であったのか想像できない。しかし周囲をよく見ると、きっとこのあたりも植林地であったのだろう(写真2)。 流れ落ちた土砂や倒木が斜面下にどのような被害を及ぼしたのか考えると恐ろしい。山は木で守られるはずだが、木が守り切れなかっ…

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No.302 偉大なる木の力《防災》

2018年07月09日

岸本真弓 土砂が落ちてきて国道が通行止めになることが頻発しているという現場に行った。シカが少なからず影響しているだろうから、その実態を調べて欲しいという依頼をうけたためだ。森林再生の専門家の先生と一緒に、裸地化し土砂が崩落している現場を目指す。斜面を進むと鉄砲水の痕に出た。地面がVの字にえぐれていた。(写真1)。 写真1 北側の岸壁とも言える斜面を登ると、1本のケヤキが立っていた。崩落はそこから始まっている? いや、そうではない。始まりはもっと上部だ(写真2)。 写真2 ケヤキは土砂を堰き止めていた(写真3)。この…

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NO.301 山の小さな蛍光色

2018年06月26日

岸本真弓 山の中は生物の個体数以上に多様な色にあふれている。一個体が様々な色を持つこともあるし、同じ色が季節を追って変化していくこともあるからだ。だから同じところを何度歩いても、歩けば歩くだけ新しい発見がある。 山で見つけたもの、気づいたこと、あとで便利なインターネットで調べることもできるようになった。写真1はゴマフボクトクの幼虫の糞のようだ。この写真では鮮やかさがいまいちだが、山の中では蛍光オレンジのように見えることもある。木の根元に固まってある小さなオレンジ色のつぶつぶ。 写真2はウスタビガの繭。蛍光グリーンの…

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NO.300 シカ目面

2018年06月15日

森洋祐 調査で雁坂峠に登ってきました。雁坂峠は標高2000mを超える峠で、平地より一足早く秋の気配を漂わせ、リンドウが咲きウラジロヨウラクの紅葉が始まっていました。事前の天気予報を裏切り青空となった雁坂峠で、ササ原を眺めていたそのとき・・・ さて、WMO用語で「シカ目」という言葉があります。「シカもく」ではなく「シカめ」です。WMOは仕事柄、シカを探すことが多くあります。そんなとき遠くのシカにも反応するようになった目のことを「シカ目」といいます。使用例としては「あのシカに気づかないとは、まだシカ目になってないな。」…

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No.299 小さな島の赤と白

2018年06月04日

岸本真弓 長崎県の五島列島の北部に小値賀町という人口2500人の小さな町がある。縁あって島を何度か訪れた。何もない、何もないが、いや何もないが故にほっとする。島は小さく、あっという間に回りきる。でも、また回りたくなる。そんな島に赤浜はある。 海中火山の爆発によって生まれた小値賀島、その際火山噴火で飛ばされた溶岩が地球時間によって細かく砕かれ、風化して砂になった。ここに流れた溶岩には鉄が多く含まれたのか、地表に飛び出した際に酸化し赤色を呈したという。小値賀島の土が赤いのは他の火山島と同じとわかっていたが、赤い砂浜なん…

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No.298 このフン誰の?

2018年05月24日

海田明裕 まずは写真の糞をご覧いただきたい。 哺乳類にある程度関心がある方ならおそらく 「シカの糞」かな、と思われると思う。 パラパラとばら撒かれた俵型のフンはいかにも典型的なシカの糞である。 しかし、この糞をした主(ぬし)は、2枚目の写真に写る動物です。 ヒツジ。観光牧場の中での風景です。 この環境で見なければなんの疑いもなくシカの糞として記録していたであろうと思われます。もちろん通常の調査地においてヒツジがフラフラしている可能性はほぼないのですが、本当に万に一つも絶対にないのか? お前は本当に知っているのか?木…

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No.297 山の(お)ことわり

2018年05月07日

岸本真弓 シカの糞塊密度調査のために山の尾根を歩いていて、前から数台の自転車がやってきて言葉を失ったことがある。都市に近く、少し進めば車道があったからなのか。 別の場所。春の山を歩いていて、生々しく樹木に書かれた「バイク走行禁止」の文字(写真1)。こんなところをバイクが走るのか? しばらく進むとまた看板があった。消防分団の「自然を大切に」の看板が哀しい(写真2)。 何が目的で山の中をバイクで走るのだろう。野には野の、山には山の理あり。山にしか生きられない無数の命を踏みにじらないでもらいたい。バイクなんて、山には「お…

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No.296 寄らば大樹の陰

2018年04月23日

岸本真弓 鳥取の山の中で見つけたスギの木。 耳を広げたマンモスの頭部のようだ。どういう出来事があればこのような形になるのか。 過去には倒木があったのか、一番の根元には円筒形の間隙があった。 そこは、様々な動物たちが身を寄せた痕がある。地表はしっかり締められ、心なしか中央部がより凹んだ丸い形に見える。雨を凌いだか、風を凌いだか、はたまた会いたくない相手から身を隠したか。木の命の長さだけ動物たちの営みがくりかえされる。 そんな木に私もそっと寄りかかってみる。触れた腰が、腕が、心なしか暖かく感じた。   

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No.295 常緑樹の落葉

2018年04月13日

岸本 真弓 4月、山を歩いていたらアラカシの葉がたくさん落ちていた。 風が強かったからもあるかもしれない。でも、時季的にも春はアラカシの落葉季なんだそうだ。 アラカシは常緑樹だ。しかし、当然のことながら常緑樹も落葉する。アラカシは2、3年に一度落葉するという。 日本の常緑樹は1~3年で落葉するものが多いらしい。熱帯では数ヶ月で、逆に寒い地のマツでは30年以上落葉しないものがあるとのこと。 常に緑を保っているように思う常緑樹だが、新旧交代の方法は様々で、徐々に入れ替わるものや一斉に入れ替わるものもあるらしい。アラカシ…

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No.294 人の利用(行く手を阻むもの8)

2018年04月04日

岸本真弓 これまでの「行く手を阻むもの」は自然あるいは、人の手が加わった後の姿であったが、今回の阻む「もの」は「者」。人そのものだ。写真1は松茸を採集するためにその権利のない人の侵入を拒む看板である。写真2はなぜ「入ってはいけん」のか具体的な理由は書いていないが、個人所有地だからか? このロープの中に入ったらいけないのであろう。写真2のように入ってはいけない場所がはっきりとロープがはってあればそこに入らないようにして進むことができるが、入ってはいけない境界がわからないと困ってしまう。 「困りました」、岸本関休場。 …

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No.293 展示場?

2018年03月21日

岸本真弓 調査で利用した宿の駐車場に並ぶ同じような車6台。私達の会社の車です。 このタイプの車が使い勝手が良いのです。  1) 細い道もOKで小回りが利く。  2) 荷物がたくさん載せられる。  3) 雨の日荷室のドアが屋根になる。 体の大きな人には疲れるようですが、私には問題ありません。どこでもなんでもこの車を走らせます。  

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No.292 木には角も生える?

2018年02月19日

岸本真弓 姜さんが、フォトブログNo.269で樹木の体内に生えた「牙」を紹介しています。そこで、私は「角」を紹介したいと思います。 「牙」と違い、「角」には様々なものがあります。「角」は主として頭部にある堅く突き出たもののことを言いますが、哺乳類の角は大きくわけて、頭蓋骨が変化したものと、そうではないものに大別されます。前者はウシ科の動物のものであり、牛やカモシカがそうです。後者にはまたいろいろなものがあり、シカのように毛皮を被ったコブが成長し骨化するものや、サイのように毛と角質の塊のようなケラチン質で出来ているも…

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No.291 自然のアーチ

2018年02月09日

南田 枝理子 調査で山を歩いていると、突如、目の前に曲がりくねった木が現れた。 まるで自然に形成されたアーチのようである。 どうして、このような形になったのか、本当に不思議である。このような自然の不思議を発見できると、少しうれしくなる。 思わず、この自然のアーチをくぐりたくなった。  

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No.290 せにはらにかえられる?

2018年01月26日

岸本真弓 フォトブログNo.281で紹介されているように、マンリョウ、(「万両」)はシカが好まない植物だ。万両だけでなく伊豆千両(イズセンリョウ)もシカが好まない植物だ。これも「銭」の臭いがするからか? ただ、シカも食べるものがなくなれば不嗜好性の植物へも手(口?)を出すことはよく知られている。 四国のあるところで、万両がシカに食べられていた(写真1)。また同じ県の別の場所で昨年(写真2)伐開地一面にひろがっていた伊豆千両が後退していた(写真3)。近づいて見るとシカに激しく食べられている(写真4)。 背に腹はかえら…

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