No.318 ど、どうやって
岸本真弓 山の中を走る林道を歩いていると、蜂箱をよく見かける。西洋ミツバチであったり、日本ミツバチであったりするが、いずれもハチミツをとるために置いてある。四国の山の中で、歩いている道からふと堰堤を見ると、蜂箱がたくさんならんでいた(写真1)。飛ばされないように石がたくさん載せられている。何度も石を抱えて運んだのかな? 結構な高さの堰堤だから高所恐怖症の私には無理だなと思う。 写真1 少し下流へ足を進め、ふと振り返ると・・・ ど、どうやって? あっちに運んだのだろうか・・・? 写真2
No.317 前をいくもの
岸本真弓 自動撮影装置に写ったキツネ。珍しく2頭の歩み。3連写の間(写真1→写真2→写真3)、前を歩くキツネはカメラから目を離さない。わずか右前肢1歩分の時間とはいえ、見事だ。それにひきかえ、後を行く個体は前の個体の尻尾でも見ているのか、うつむき加減だ。 前を行くものには責任がある。道を決め、危険を回避し、求めるものへ進んで行く。気楽な歩みも楽しいが、そういう生き方が私は好きだ。 写真1 写真2 写真3
No.316 ご馳走の穴
海田 明裕 雪の林道を歩いていると 少し先をネズミ(ヤチネズミ?)が横切ってすぐに姿が消えた。 ちょうどそのあたりの一点に妙に中型哺乳類の足跡が 集中しているのが目に入った。 足跡の主はタヌキとテン、とネズミ。 小さな段差を覗き込むが雪とのコントラストが強すぎて 暗い窪みの奥はよく見えない。 手を突っ込んでみる。 直径が指三本ほどの穴が空いていた。 入り口にはネズミ糞もしてあった。 食べ物をさがしてウロウロ林道を歩く 「ンッ!ご馳走の香り!」匂いに気づいてか、 元を辿って穴に誘われて鼻を突っ込む姿を想像する。 ふと…
No.315 北陸のリョウブの樹皮
海老原 寛 北陸地方の山を歩いていた。北陸地方はまだシカの密度が低い場所が多く、植生が元気に繁茂している。下層から低木まで、近畿地方ではお目にかかれないような景色が続いていた。おかげで私たち調査員は歩きづらいわけで悲しくもあるが、やはりうれしくもある。 下層植生の繁茂もうれしいことではあるのだが、特に感動したのは、リョウブの樹皮が全く剥がれていないことである。シカは様々な種類の木の樹皮を剥ぐが、特にリョウブは大好きなように感じる。言い過ぎかもしれないが、私は樹皮が剥がれていないリョウブを見たことがないかもしれないほ…
No.314 痛し痒し
岸本 真弓 秋、山を歩くと頭上も足下も赤や黄色の葉で覆われている。たまに樹皮も真っ黄色?! シカに角研ぎされた樹皮から黄色の樹液があふれでている。外来種キョンの大好物カクレミノ(隠蓑:樹木の種名)である。 カクレミノの樹液は、最初は透明らしく光沢もあり、実際黄漆として家具の塗料として使われていたという。そう、カクレミノの樹液にはウルシオールが含まれており、かぶれることもあるそうだ。そういうものに滅法弱い私なんぞは一発であろう。痛くも痒くもないシカにカクレミノは痛めつけられ、私は痒くされる。
No.313 龍か和邇か、いえ烏です。
岸本真弓 1年前、山の中で見つけた。特徴的な樹皮だったので、すぐわかるかと思ったが、調べても調べてもわからなかった。 今年再び同じところを訪れた。雨だった昨年は空に続く幹や開く若芽をみることができなかったが、今年はできた。 和邇のようにも龍のようにも見えるこの体幹。正体は烏、カラスザンショウでした。 老木なのか、別の理由があるのか、図鑑通りのものばかりでない植物には困らせられる。惹きつけられる。 写真1 写真2 写真3
No.312 山と里を隔てるもの
海田明裕 その日の調査も終盤、そろそろ集落の気配がする山の裾。 急に腰丈ほどの古いけれども形の残っている石垣が現れた。 山裾に沿ってかなりの距離で続いている様子。 無理に乗り越えず通り易そうなところを探すうち、急に石垣が途切れた。 ちょうどその切れ目のところ(写真1中央)に ポッカリと、これまた崩れのないきれいなまんまるの石組みの穴が空いていた。 直径は1mあるかないか、深さは4メートルほどか。 手の使えない動物であれば容易には這い上がれない。 私の推測だがイノシシなどを追…
NO.311 弱り目に祟り目
岸本真弓 2017年、秋の初めに大風が吹いた。 いつも歩く山の尾根もたくさんの枝が落ち、様相が例年とは異なった。 植林地では、一部に黄色を刺したみずみずしい緑のヒノキの葉が、深く濃い緑の葉をつけたスギの枝が無数に地面を埋めていた。 写真1 落葉広葉樹林では、幹の折れた若木が目立った。ようく見ると、折れ曲がった側の樹皮がない。 シカに食べられているのだ。 全周を剥がれてはいなくて、まだ水や養分が葉先と根を往来していただろうに。 強風に耐えられず倒れたのだろう。 シカに手折られ…
No.310 光の呼ぶ方へ
海老原寛 調査地であるピークを目指す。山登りは楽しい。でもツライ。ここまでずっと急勾配が続いており、体力の余裕もなくなってきた。キツイ。周りの景色を見ていれば楽しい発見もあるかもしれないが、あいにく人工林が続いており、暗い林内では気も滅入ってくる。 そんなとき進むべき進路を見上げると、太陽が放射状に光を放っていた。それはまるで疲労困憊の私を応援しているかのようだった。 「ここがゴールだよ!あと少し!頑張れ!」 そんな声が聞こえた気がして、私は力を振り絞り、光を目指して歩みを進めた。その結果、ピークに辿りつくことがで…
No.309 街路樹の爪痕
海田明裕 とある商業施設の駐車場を歩いていると、ふと違和感を覚えて目がとまった。 街路樹の膝丈あたりのところの樹皮がバリバリにはげている。 よく見るとその木の他の部分や添え木にも細い爪痕が無数についている。最近のものから数年は経過して逆に盛り上がった傷になっているものもあった。 明らかにケモノの仕業。 しかし、そんなに美味しそうな実のなる木には見えない(帰って調べたらおそらくシマトネリコ)。 上を見ると実の代わりにセミの抜け殻がかなりの密度でぶら下がっている。写真では上手く写せなかったが、わた…
No.308 影絵のキツネ
岸本真弓 西方の島で、イノシシの擦り跡の木の根元になにやら懐かしいものを見た。薄気味悪く感じるほどのリアルな細い腕の先には、そう影絵のキツネが。数を数える虫(フォトブログNo.65)のように、山の中には人間にだけ見えるものがときどきある。そのとき、ちょっと嬉しいが、自然の中のそんな自分に違和感も持つ。 それにしても、久しぶりに自分でもやってみたが、私の手ではキツネになるだろうか。
No.307 Rice bran lip
海老原寛 本日ご紹介する商品はこちら!『Rice bran lip』です! まず注目すべきはこの色!ナチュラル感のあるベージュ色となっております!自然な色だからこそ、様々なシーンでご使用いただけます! さらに、フェルラ酸やγ-オリザノールなどの成分が配合されており、美容効果はバツグン!米ぬかの山に口を付けるだけで、しっかりと付着する手軽さも魅力です!あなたの魅力を引き出すこと間違いなし! 気になるお値段ですが、今だけなんと0円!通常は製造数が限られるところ、メーカーの努力により、近くの精米機に併設されているヌカハウ…
No.306 長~いヌタ場
岸本真弓 もとは何だったのか、わからない。しかし、今はヌタ場だ。 長い。とても長い。そしてずっとイノシシが擦った痕が続いている。一度や二度ではないなめらかさだ。水中歩行訓練のように細長いヌタ場を擦りながら進んだのか。それとも大家族が一列に並んで擦ったのか。ここの主が日を変え、気分を変えてあちこちで擦ったのか。真相は泥の中だ。 写真1:手前 写真2:奥(まだ先まで続く)
No.305 花葬
海老原寛 クサギの花に埋もれたモンキアゲハ。もう動かない。生涯を終えたようだ。彼(彼女)の亡骸は未だ美しい様相を保ち、花に囲まれているその様は、まるで人間の葬式のようであった。亡骸の周りには、他のモンキアゲハがひらひらと飛び回る。もう動かない彼(彼女)にお別れを告げているのであろうか。 命が尽きてもそのまま地面に落ちず、花の上に舞い落ちることができたからこその美しくも儚い風景。それでも時が経てば地面に落ち、土へと帰っていくのだろう。その様もまた美しい。
No.304 血痕
岸本 真弓 西方の島でイノシシ調査をした。この島は海中火山の噴火によってできた島で、土はミネラル分の多い火山灰土の赤土である。林床を覆うハート型の葉に血痕を思わせる赤い泥が飛び散っている(写真1)。その後をたどると(写真2)、りっぱなヌタ場が現れた(写真3)。 倒木が表土を剥がした痕のヌタ場は天蓋付きの浴場であり、そこに座るイノシシは開いた花の中に現れた『親指姫』を彷彿とさせる。この島には、数年前、初めてイノシシが泳いで渡ってきた。島最大の動物の出現に、島の人は戸惑っている。
No.303 尾根の消失(行く手を阻むもの8)
岸本真弓 紀伊半島は台風の被害を受けやすい。ある年のシカの調査で尾根を歩いていたら、全面に赤茶けた裸地が広がった。進むべき尾根が、、、ない(写真1)。どうやら、斜面崩壊が発生したようだ。その対策として工事が実施されていた。 写真1 見事に何もかもなくなった一帯を見ていると、ここが何であったのか想像できない。しかし周囲をよく見ると、きっとこのあたりも植林地であったのだろう(写真2)。 流れ落ちた土砂や倒木が斜面下にどのような被害を及ぼしたのか考えると恐ろしい。山は木で守られるはずだが、木が守り切れなかっ…
No.302 偉大なる木の力《防災》
岸本真弓 土砂が落ちてきて国道が通行止めになることが頻発しているという現場に行った。シカが少なからず影響しているだろうから、その実態を調べて欲しいという依頼をうけたためだ。森林再生の専門家の先生と一緒に、裸地化し土砂が崩落している現場を目指す。斜面を進むと鉄砲水の痕に出た。地面がVの字にえぐれていた。(写真1)。 写真1 北側の岸壁とも言える斜面を登ると、1本のケヤキが立っていた。崩落はそこから始まっている? いや、そうではない。始まりはもっと上部だ(写真2)。 写真2 ケヤキは土砂を堰き止めていた(写真3)。この…
NO.301 山の小さな蛍光色
岸本真弓 山の中は生物の個体数以上に多様な色にあふれている。一個体が様々な色を持つこともあるし、同じ色が季節を追って変化していくこともあるからだ。だから同じところを何度歩いても、歩けば歩くだけ新しい発見がある。 山で見つけたもの、気づいたこと、あとで便利なインターネットで調べることもできるようになった。写真1はゴマフボクトクの幼虫の糞のようだ。この写真では鮮やかさがいまいちだが、山の中では蛍光オレンジのように見えることもある。木の根元に固まってある小さなオレンジ色のつぶつぶ。 写真2はウスタビガの繭。蛍光グリーンの…
NO.300 シカ目面
森洋祐 調査で雁坂峠に登ってきました。雁坂峠は標高2000mを超える峠で、平地より一足早く秋の気配を漂わせ、リンドウが咲きウラジロヨウラクの紅葉が始まっていました。事前の天気予報を裏切り青空となった雁坂峠で、ササ原を眺めていたそのとき・・・ さて、WMO用語で「シカ目」という言葉があります。「シカもく」ではなく「シカめ」です。WMOは仕事柄、シカを探すことが多くあります。そんなとき遠くのシカにも反応するようになった目のことを「シカ目」といいます。使用例としては「あのシカに気づかないとは、まだシカ目になってないな。」…
No.299 小さな島の赤と白
岸本真弓 長崎県の五島列島の北部に小値賀町という人口2500人の小さな町がある。縁あって島を何度か訪れた。何もない、何もないが、いや何もないが故にほっとする。島は小さく、あっという間に回りきる。でも、また回りたくなる。そんな島に赤浜はある。 海中火山の爆発によって生まれた小値賀島、その際火山噴火で飛ばされた溶岩が地球時間によって細かく砕かれ、風化して砂になった。ここに流れた溶岩には鉄が多く含まれたのか、地表に飛び出した際に酸化し赤色を呈したという。小値賀島の土が赤いのは他の火山島と同じとわかっていたが、赤い砂浜なん…