研究員によるフォトブログ

No.289 天然のボトルガーデン

2017年12月25日

岸本真弓 9月、広葉樹の隙間から差し込む透き通った日差しが丁度あたるところに、瓶はあった。 汚れのない緑が美しい。中を覗くと苔も同居しているようだ。天然のボトルガーデン。どうやって入り込んだのかわからないが、やがて成長してボトルから飛び出していくだろう。こんな小さな世界におさまるはずがない。 ボトルガーデン、テラリウムは、実は世間で流行っているらしい。確かに美しい植物を育てるのは楽しいし、くつろいだ環境で間近に見るのは心癒やされると思う。しかし、やっぱり自然はもっとでっかいのである。汚れたって、ちぎれたっていいんだ…

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No.288 今晩の宿はこちらですか・・・?

2017年12月18日

南田枝理子 サルの群れをカウントするために群れを追跡していたところ、夕方になると群れの一部が工場団地に出没した。 工場団地に出没したサルたちは、工場団地の中の道路や工場の屋根を縦横無尽に歩いていた。さらには、電柱に登って、電線を綱渡りする者もいた。まるで無法地帯のようだった。 そして、日が暮れても彼らは工場団地から立ち去ろうとしない。なんと工場の屋根に30頭ほどのサルが滞在していた!彼らはそのまま工場で眠りにつくのだろうか。工場団地の電灯が明るくて眠りにくいことはないのだろうか・・・。驚くべき光景であった。 &nb…

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No.287 伐採木 (行く手を阻むもの7)

2017年12月05日

岸本真弓 シカの糞を探して尾根を歩く。だいぶ前から不穏な緑に目が行っていたが、そこまで到達するとそこには大量の木が横たわっていた。ヒノキの葉は青々とし、切り口からはヒノキの良い匂いが放散され、一帯に良い匂いが漂っている。「フィトンチッドがたっぷりだ」などと深呼吸をしている場合ではない。尾根を歩かなければ調査にならない。調査ができない場所は速やかに回避して、この先へ行かなくてはならない。 「参りました」、岸本関完敗。場外へ敗走。  

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No.286 木に登ったキツネ?

2017年11月21日

姜 兆文 山の調査中、奇妙な形にねじれた枯れ木を発見。そのねじれを木の根元から先端まで目で追って見ると、キツネが木に登ったように見えた(写真1)。近づいて見ると、枯れた木の先端部分が歳月を経て、風雨の侵蝕によって残った形であった(写真2)。皆さんにはこの形がキツネの顔に見えませんか。私には、左側の小さい突起が口鬚、下方に突き出しているのが顎と鬚、上方に尖っているのが耳、真中はまるい目……であるように見えた。枯れ残った幹と枝が天空を背景にして、ふとした角度でキツネのように見える。自然が作り出す偶然の造形の面白さだ。 …

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No.285 しし神様の最期の眠り(閲覧注意)

2017年11月11日

岸本真弓 春、鳥取の山でイノシシの痕跡調査をする。イノシシがいろいろな痕跡を残しているが、一番興奮するのが、寝跡(寝床)だ。せっせ、せっせと1本ずつか、数本ずつかのササを運び寝床を作っているのだろうが、あの体、あの口、で、どうやってこのようなものを作るのか。ここまでして苦労してつくった寝床、何日くらい使うのだろう。疑問と想像はつきない。 その日も尾根を歩いて行くと、高さ30cmほどで切り取られたササが目につきだした。「おっ、これは寝跡があるな」と期待しながら進む。ありました。りっぱな寝床が。 「?」いや、何か変だ。…

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No.284 鉄壁?

2017年11月02日

海老原 寛   サルの調査中、ある集落でしっかり囲われた畑を見つけた。その畑はワイヤーメッシュで囲われ、その上にはサル対策のためか電気柵が設置されている。さらにそれらの柵の外側にもう一重にワイヤーメッシュ柵が設置され、内側の柵と同様にワイヤーメッシュの上に電気柵が設置されている。さらにさらに、その2つの柵の間に犬が放し飼いにされているではありませんか!私が今まで見た中で一番厳重な柵かもしれません。これだけ柵にコストをかけるくらい、この地域の被害は大きいのでしょう。住民の方の熱意と執念を感じ、私たちも地域の…

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No.283 すでにいい具合の死骸( アブラコウモリ)

2017年10月19日

海田 明裕 「庭でコウモリが死んでいる。」 神戸市北区の自宅の庭にポツリと落ちていたらしい(発見者は家人) アブラコウモリ。 内臓と腹部 皮膚が一部無くなっているが その他はほぼ完全。 すでにカピカピに乾燥している。 アブラコウモリ然とした顔の様子が 全く遜色なく残っている。 剥製にすると折角の特徴がうまく再現されず なんとなく残念感が否めないものが多いコウモリ類だが この死骸、労せずしてとてもいい具合である。    

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No.282 奇跡と儚さ

2017年10月09日

海老原 寛 シカの調査で山の中を歩いていたところ、尾根上に突然ササが現れた。ササが占める面積は直径2m程度であり、ササ藪と呼べる広さではない。近くにササ藪があってそこから伸びてきたわけでもない。集落近くでもない。本当に突然、尾根上にササが現れたのである。ササは一般的に、地下茎を伸ばして専有面積を拡げていく。それでも何十年かに一度は花を咲かせ、種子を作るようである。そんな何十年かに一度作られた種子がこの尾根上に落ち、しっかりと成長しているのだろうか。また、不思議なことにこのササはとても窮屈そうに限られた範囲に密生して…

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No.281 価値観

2017年09月29日

海老原寛 シカが増加するとほとんどの植物が食べられ、森の地面が露出してしまう。ただし、シカは嫌いな植物は食べないので、その植物だけは地面に残る。この森も例に漏れずシカが多く、地面が露出してしまっているが、食べられずに残っている植物がいる。マンリョウである。 マンリョウは漢字で万両と書かれることもあり、お金を連想させる縁起のいい植物とされている。マンリョウがなぜ嫌われているのか理由はよくわからない。少なくとも、人にとっては縁起のいい植物なのに、シカにとっては価値がないようである。    

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No.280 死骸がいっぱいの緑の遊歩道

2017年09月20日

姜兆文  夏のある日、駅へ行く途中のことであった。八王子バイパス脇の緑の多い歩道を歩いていた時、大量のミミズの死骸(写真1)に出くわして、驚いた。  バイパスと歩道の間にはツツジの茂みがあり、歩道を挟んで向かい側は緑豊かな住宅地である(写真2)。ミミズは茂みから住宅地へ移動する途中、炎天下で死んでしまったのだろう。人間は快適に生活するために道路を作ったが、ミミズとしては、大変な迷惑だと思う。約3メートルの歩道は人間にとってはさして広くはないが、ミミズにとっては、大変な距離になる。また、このようなミミズの死骸を見かけ…

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No.279 気合いを入れすぎて

2017年09月11日

藏元武蔵 サルが道を渡り始めた(写真1)。 他のサルもぞくぞく渡りはじめたので、 「負けてたまるか!」と気合いのストレッチ。 その間に、全員に抜かれた・・・(写真2)。     写真1                        写真2          

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No.278 社有林というもの

2017年08月18日

岸本真弓 山を歩いていると、ごくたまに「社有林」の看板を見つける(写真1、写真2)。今回紹介したのはいずれも製紙会社の社有林の看板である。 写真1の会社をインターネットで調べてみると、「社有林の保全を通じて地球環境と地域社会への貢献を図っています」というキャッチフレーズが飛び込んでくる。この会社は紀伊半島を中心に社有林を擁している。もともとは他の製紙会社と同じく、第二次世界大戦の戦中戦後に原料素材の確保のため社有林を確保してきたようだが、その後の時代の変化に応じて、現在ではスギ・ヒノキの人工林経営と広葉樹天然林の再…

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No.277 しし神さまの檜皮敷(ひわだじき)

2017年08月07日

岸本真弓 京都の山。シカの密度が高く、下層植生はほとんどない。最初に草本類やササが消え、やがて低木、そして中低木が消失していく。 シカの糞塊数を数えていく調査では薮がなくなり、下層植生も少なくなれば、歩きやすく見落としが少なくなって精度の高い調査ができる。 が、やっかいなことが起こることもある。シカの嫌いな植物(フォトブログNo.89)の繁茂だ。特にアセビはやっかいだ。常緑の低木が膝丈くらいでみっちり生えていると、足下が見えにくい。背丈くらいで密生していると歩きにくい。 やっかいだと思っているだけではどうにもならな…

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No.276 対称的死骸 (アマガエル)

2017年08月02日

海田明裕 コンクリートの平滑な地面 ふと目線が何かに引き付けられる 不自然に整った形 すぐにカエルと判明するも あまりにシンメトリカルな死に様 おそらくアマガエルであるが そんなことよりなぜこんな形で干からびたのか 悲運の平面ガエル  

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No.275 日常に飽きたタヌキ

2017年07月20日

藏元 武藏 調査で山を歩いていると、タヌキのタメ糞に遭遇。 いつもは尾根上の平らな場所でよく見かけるが、今回は違った。 糞の後ろ側(矢印のとこ)は、直角の急斜面で、2mぐらいの落差があった。なぜこんなところに?糞の後ろ側をのぞくと、一個だけ糞が下に落ちていた。なんてやつだ・・こんなスレスレの場所で、1個しか落としてない・・次はどうする。糞の上?それとも横に溜めるのか・・ 人は時に、落ちるか落ちないかのギリギリを楽しむことがある。 それは動物も同じかもしれない。

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No.274 ツバメの住宅情報に朗報

2017年07月06日

姜 兆文 本ブログNo.141で、南アルプスの芦安集落のバスターミナルでツバメの家族(写真1)と出会ったこと、その後巣が撤去され、数年間同じ場所での巣の確認ができなくなり、本ブログNo.215で、ツバメの「住宅難」を記事にした。 生活スタイルの変化により、軒下のある伝統的な日本家屋が減り、軒下でのツバメの巣作りの適地は少なくなっている。また、折角、巣を作ったのにツバメの糞害を危惧して撤去されたケースも多かった。 このようなツバメの巣作りにとって厳しい環境の中、東北自動車道の佐野PAでツバメの巣作りを手助けしようと工…

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No.273 優しくなれる春の山

2017年07月03日

岸本真弓 萌える春の山。メリハリのある紅葉や、新緑の頃のみずみずしさと生命力あふれる力強さとは異なり、優しさと曖昧さとそしてどこかわくわくさせる山のいろ。日一日いろはうつり、山のしたからうえへ、川のしもからかみへ、うごいていく。 山を歩けばこの時を待ちわびた小鳥たちの力強いさえずりがあふれる。水たまりには陸にあがる時を待つ無数のオタマジャクシ。ウラジロも羽ばたこうとする白鳥が頭をもたげたように新しい芽をだしている。すべての動植物たちが、春を謳歌する。私も、苦手なもの(フォトブログNo.202)へも、やっかいなもの(…

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No.272 シカに化けたラクダ

2017年06月20日

海老原 寛 調査中、シカの置物を見つけた。しかし、よく見てみると違和感がある。これはシカではない・・・ラクダだ。ラクダの置物にシカの角を付け、色を塗り替えただけだ。ラクダとシカでは共通点は反芻獣であることくらいだろうか。 日本各地でシカによる生態系被害が生じている。シカが増えすぎたせいで植物が食べ尽くされ、土壌が露出して更地になってしまっている場所もある。もしかしたらこの置物は、シカが日本の山をラクダが住んでいる砂漠のようにしてしまうかも・・・という暗示なのかもしれない。

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No.271 軋轢の先

2017年05月31日

宇野浩史 電波を追ってサル群れを探している最中、ある集落内の路地を曲がると同時に、数頭のサルが目に入った。 「居たっ!」という喜びが沸き立ったが、周囲の光景を見て、一瞬にして残念な気持ちになった。 サルたちの手には大粒のミカン。そして足元には大量の残骸が散らばっていた(写真)。 遠くでは爆竹の音が鳴っているが、サルたちは微動だにしない。私の車が数メートルのところまで近づいても、大きく逃げることはなかった。 このようになってしまった群れを所謂『良い』群れに戻すことは簡単ではない。 集落に住む人々とサルたちの将来像を想…

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No.270 開いたオ〇オ?

2017年04月28日

岸本真弓 春、山を歩いていたらシカの角が落ちていた。拾い上げるとなにやら見たことがあるもののような。 シカの角は毎年春になるとポロリと落ちる。そしてまた新たな角が生えてくる。角が落ちた直後は頭の角座(角がついている台座のようなところ)には血がにじむが、それもすぐ乾き、皮膚が覆って次の角の成長が始まる。何のために毎年生え換わるのか。 オスの角は強さのシンボル。メスをめぐって闘うとき、昨年よりは強くなるチャンスを与えられているのかもしれない。子育てをするメス、子をつくるために角育てをするオス、春から夏のシカの食欲は旺盛…

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