No.182 山の中の名前
岸本 真弓 山を歩いていて、突然人の名前を見つけることがある。 その山主さんを示すのか・・・? では、岩に書かれた文字は苗字ではないのか? 知り合いの名前に出会って、たぶん間違いなく別人なんだけど、とても懐かしく思えることもある。ちょっと珍しい初恋の人の名を見つけた時は、なんだかどきどきした。 20130622_yamanonakanonamae.jpg
No.181 タヌキの不可解な行動
佐伯 真美 小雪舞い降りる冬の日に、山中で奇妙な光景に出くわした。 山の稜線部の広場に1頭のタヌキがいた。 タヌキは直径3m程度の弧を描くようにクルクルと走っていた。このタヌキ、3分程度回り続けた後、ピタッと止まり息を荒げながらボーっとしていた。しばらくすると我に返ったように、再び直径3m程度の範囲を走り始め、回る、止まる、回る、止まるを繰り返していた。 このタヌキの動画を関西分室の岸本真弓獣医師に見てもらったところ、直ぐに返信をもらえた。このタヌキ、どうやら病気のようだ。見た目、首もまがっており斜頸と思われ、可能…
No.180 雪上の足跡のクイズ
姜 兆文 1月28日から2月2日まで、青森県下北半島のサル行動調査に参加した。久しぶりの雪山の調査は大変だったが、楽しかった。私は中国東北地方の出身で雪環境に慣れ、クロテンの行動調査するため、中国大興安嶺の氷点下30度ぐらいの雪山で、アメリカ人研究者と泊まり込んで調査した経験も何回があった。来日後、1995年から1997年まで山形県の雪山でカモシカの食性調査、2000年から2002年まで富士山麓でのシカ食害調査以来、本格的な雪山調査は11年ぶりだ。 カンジキで雪山をサルの足跡を辿って追跡しながら、その他の動物の痕…
No.179 既成概念
岸本 真弓 小学生の一時期、石を蹴りながら家まで帰るという遊びに夢中になっていた。それを終わりにしたのは、「石が生きていたとしたら、こんなに移動させられて嫌かも。生きてるって、私が思う『生きてる』だけではないかも」とふと思ったからだった。 ザトウムシを初めて林内で見たとき、絶対これは宇宙船だと思った。宇宙人が必ずしも人間と同じ大きさとは思えなかったから。ザトウムシという名前を知った今でも、この動物(?)はしばし私を既成概念から解き放ってくれる。 20130306_josei.jpg
No.178 雪上の蝶
中山 智絵 先日、青森県の下北半島にニホンザルの調査へ行った。雪山調査ではいつも以上に体力を使うので大変疲れた。しかし、雪山には楽しみもあった。動物の足跡だ。今回の調査では、ニホンザルの足跡の他にキツネ、ニホンノウサギ、ニホンリスの足跡を見た。なかでもニホンリスの足跡は私のお気に入りだ。なんだか蝶のようで可愛らしい。 20130212_ashiato.jpg
No.177 カモシカのいる場所
山田 雄作 写真のカモシカはどこにいるでしょうか。背景にはコンクリートが見えますが動物園ではありません。 南アルプスでカモシカの調査を行った際に道路沿いの法面にでてきてくれた個体です。 カモシカはこんな見晴らしと風通しが良い急斜面にはよく出てきます。 区画法に参加してくださった皆様ありがとうございました。 20130120_kamoshika3.JPG
No.176 屋久島のサルとシカ
清野 紘典 鹿児島県の南の海上に位置する屋久島。日本を代表する世界自然遺産の一つである。 屋久島のヤクザルやヤクジカは、屋久杉、ウミガメと並んで屋久島の自然の豊かさのシンボルになっている。 屋久島の西部林道は、車で数百mも走ればいくつものサルの群れやシカのグループに遭遇できる場所で、サルとシカの生息密度が高いエリアとして知られている。 そんな西部林道、道路上にサルの糞が一つとして落ちていない。 あれだけたくさんのサルがいれば糞のひとつも落ちていてもおかしくない。 ではなぜ見当たらないのか、シカがサルの糞を食べている…
No.175 もよおすところ
岸本 真弓 痕跡は、そこに棲む動物たちの生きる証拠であり、彼らの生きざまを想像させてくれる貴重なヒント。糞は、山歩きで最も目につく痕跡だ。 写真はテンやイタチとおぼしきイタチ科の糞。イタチ科は、なんだか目立つところによく糞をする。何かの上にしてあると分解が遅い可能性があるにしても、なんでもない地表面より、けっこう主張を感じるところに多いと思う。 写真左上は大きな葉っぱの上。右上は三角点石柱の上。左下はプラスチック杭の根元。右下はなぜか落ちていた靴下の上。ここに我有り、あるいは、ここは自分のもの、とばかりに糞が…
No.174 DOR
岸本 真弓 Dead on the Road:路上の死(体)。多くは交通事故。 ところが、一見無傷で、交通事故にはとても思えない様子で、モグラやヒミズのDORをとてもよく見る。これは何なのか、なぜモグラやヒミズはここまで頻繁に道路上でボタンと死んでいるのか、野生動物調査に関わる多くの人たちの疑問だ。昨年、先輩調査員の方がこの謎を解くべくある検証をすると言っていた。謎解きが待たれる。 写真は同じ日に同じ道路でみつけたモグラ(上)とヒミズ。 20121001_dor.JPG
No.173 角2
山田 雄作 No.169ではシカの袋角について紹介しましたが、今回はカモシカの角の写真です。 角のアップの写真でわかりづらいのですが、添えてある手の正面にあるのが角で、右側に見えているのが耳です。 カモシカの角はシカとは違い雌雄共に生えます。また、毎年抜け替わることはなく生涯延び続けます。そして、よく見ていただくと角を一周するように溝が見えますが、これを角輪といい、この溝の数によって年齢を推定することもできます。 シカとカモシカ名前が似ているので、混同されやすいですがシカはシカ科、カモシカはウシ科で同じ角でもここま…
No.172 従順な子ジカ
横山 典子 滋賀県の山を歩いているとき、登山道の脇をふとみると、薮も何もないちょっとしたくぼみに子ジカが寝ていた。朝の9時くらいのことである。とりあえず写真を撮りその場を去った。 山頂で仕事をして同じルートを戻った。もういるはずはないだろうと思いつつ、子ジカがいた場所を見ると、寝返りをうったのか、寝ている向きは変わっていたが、まだそこにいた。午後4時くらいである。つまり、7時間はずっとそこにいたことになる。 さわれるかもしれないと思って近寄ると、相変わらずじっとしている。そーっと手を伸ばして頭に触れると、全く逃…
No.171 勝ち? 負け? それとも
岸本 真弓 京都の春山。一度ツル性植物に巻かれた経験を持つと思われるアベマキの木が立っていた(写真上)。しばらく進むと、今度はツル性植物が死んだ木を抱えていた(写真下)。お互いの力関係なのか、それとも本ブログNo.160のように第三者介入があったのか。 このあたり、広葉樹林の多くがアベマキ、コナラといった樹皮がごわごわの樹木ばかりになっている。シカが食べないからなのだと思う。 20120730_kachimake.jpg
No.170 地上絵
岸本 真弓 滋賀県のあるところに、「鹿の楽園」と名付けられ、看板まで立っているところがある。看板をすぎてしばらく行くと草原にでる。草原というか、時季は秋だから、草も枯れて裸地である。そこに絵(線)がある。1本は、人が歩く登山道。他のすべての線はおそらくシカ。まるで地上絵のようだ。 20120713_chijoue.jpg
No.169 角
山田 雄作 先日、神奈川県の丹沢山へ登ったときに出会ったシカの1枚です。 この時期にだけ見られる袋角のオスです。 シカの角は枝角と呼ばれ、毎年落角と再生を繰り返します。 角は春から秋にかけて形成され、形成途中は写真のように袋角となり、秋には袋がとれて立派な角になります。 20120630_tuno.jpg
No.168 山で出会った有毒植物
中山 智絵 雁坂峠を訪れた際、妖艶な色の花をつけた植物が沢沿いに繁茂していた。この辺りはシカの影響で下層植生はすっからかんなのだが、この植物は元気いっぱいに葉を広げていた。 これはもしや有毒植物なのではないかと思い、家に帰って早速調べてみると、やはり有毒植物であった。しかも全草有毒で、死亡することもあるそうだ。その名はハシリドコロ(ナス科ハシリドコロ属)。名前の由来も恐ろしい。ハシリドコロの“ハシリ”は誤食した後に幻覚が生じて走り回ることに由来しているようだ。 厚生労働省のHPには、芽生えをフキノトウや柔らかく美味…
No.167 プロゴルファー猿?
岸本 真弓 三重県のあるサルの群れを追跡する機会を得た。3日間の調査であったが、3日間ともひとつのゴルフ場に滞在していた。昼間はゴルフ場を取り囲むようにある林で採食し、夜はゴルフ場内に点々とある林で眠っていた。朝早くにはゴルフ場内を闊歩する。私たちはゴルフ場には入れないので、遠方から観察するだけ。 ゴルフ場も災難なんだろうが、人馴れが進むという点ではサルにとっても喜ばしくない。 20120523_purogorufa.jpg
No.166 行き着くところ
岸本 真弓 毎秋訪れる滋賀の山。 尾根を道路がぶった切っているので、法面を右に左にちょこまか歩いて道路に降りる。途中移動する法面中段の幅50cmほどのコンクリ道(?)に大きなタヌキのため糞がある。今年もあった。 タヌキにとってここが終点なんだろうか。 20120509_norimennotamefun.jpg
No.165 コハクチョウ
山田 雄作 1月の千葉県での調査の際に山から下山したところにあるダムでコハクチョウを見つけました。 この調査ではあまり水辺へ近づくことがなかったので、気持ちよさそうに水際で羽ばたくコハクチョウを見て、癒されていました。越冬のためにやってくるようなので今は日本にいないかもしれません。 神奈川の山の中ではミソサザイやオオルリの囀りが聞こえてくる季節になりました。 20120426_kohakuchou.jpg
No.164 コシダの家
岸本 真弓 久しぶりに和歌山の山を歩いた。 台風の爪痕が激しい場所を避けたため海岸沿いが多くなった。 「そういえば人生最大の藪は和歌山のシダ藪だったなあ」などと思い出す。 そんなシダが上手に家に作り変えられていた。イノシシの繁殖用の巣。 よく見るのはササで作ったものだが、ここではコシダ。シカの忌避植物でもあるため、そこいら中に繁茂している。イノシシ君(さん?!)、もっと使ってくれないかな。 20120412_koshida.jpg
No.163 リボンちゃんと猫ふぐり
岸本 真弓 ころんとしたシラキの実はネコの精巣のようだ。 丸みを帯びたハート型のマルバノキの実はまさにリボン。どちらもとてもかわいい。これらは朔果(草かんむりのある朔)で、成熟すると果皮が裂けて、中から種子が飛び出てくる。私が名前にいただいた「真弓」の実もそうである。 20120405_ribon.jpg