研究員によるフォトブログ

フォトブログ一覧

No.36 GPSテレメの回収*

2006年08月発行

瀧井 暁子  WMOでGPSテレメを使い始めたのは2000年頃からです。当時回収した首輪から得られたデータをみて、人力による追跡の限界を感じたものです。  その後、シカやクマなどにGPSテレメを装着する機会がたびたびあり、今や野生動物調査には必要不可欠な道具の一つとなっています。ところで、最近の目下の問題は、首輪に取り付けた「脱落装置」が作動しない、ことです(データを首輪に蓄積するタイプでは、首輪ごと回収しないといけないため、脱落装置をとりつける)。もちろん脱落装置が作動するものもありますが、作動しないで、高額な首…

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No.35 金髪碧眼

2006年08月発行

岸本 真弓  2年前のことなのだが,5月21日りっぱなメスザルが移動式の檻に入ってきてくれた.ちょうど生まれてまもないアカンボウが一緒だったが,有り難く発信機を付けさせていただいた. アカンボウは麻酔で眠るお母さんにしがみついて離れない.そのままとりあえず作業を進め,一段落したところでアカンボウに目をやるとなんとも切ない目でこちらを見ていた. 虹彩がグレーだった. そのためか憂いをおびているように見える.あまりにいとおしくそっとなぜてみた.泣き出すこともなく,顔をおかあさんに埋めた.そよかぜにゆれる毛が輝いて見えた…

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No.34 「クロ」の憂鬱

2005年12月発行

泉山 茂之  「クロ」はどこにでもいる雑種の飼い犬で、元気盛りな1才半のオス犬である。でも、ただのイヌではない。約3週間の特訓の後に、今年の夏にデビューした、「モンキードック」第1号だからだ。 サルの群れが来ると、クロの鎖は外され、サルたちに向かって疾走する。クロにとって、自由に山野を駆け巡る時が幸せな瞬間であることは、誰が見てもすぐにわかる。サルたちは、蜘蛛の子を散らすように逃走する。クロのおかげで、リンゴも野菜も、サルによる被害は全くなくなった。食べきれない収穫に、家族の誰もが、心からクロに感謝している。  た…

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No.33 ヘアートラップ調査の楽しみ

2005年11月発行

森本 英人  この夏、長野においてヘアートラップ調査というものを行いました。これは、ある地域に何箇所かバラ線を張り、クマの毛を採集して、DNA分析を行い、個体数推定を行うものです。  長野ではトラップを100箇所設置し、約10日に一度毛の採集を行いました。一口に100箇所といっても、これはなかなか大変な作業です。今回は3チームで動いていたので、1チーム約33箇所。すべての箇所で、バラ線をじっくり見てクマの毛を探すので、さすがに疲れます。  しかし、そんな疲れが吹っ飛ぶ瞬間があります。それは、やはり熊が来ていたときで…

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No.32 旅するサル

2005年11月発行

清野 紘典  9月下旬、早朝ツンと鼻につく秋の気配を感じながらH県S市に生息するニホンザルの群れを調査に出かけました。調査のため群れのメスザルには発信機がつけられており、それにより群れを識別・探索することができます。メスザルは群れから生涯出ていくことはないのでメスザルに発信機を付ければ群れを特定することができます。S市には現在特定されている群れが2群いますが、その日はそれらを含む3群をS市周辺で広域にわたり探索することにしていました。  S市に入りしばらく車を走らせると、発信機からの信号で識別している一つの群れが近…

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No.31 糞採集紀行

2005年10月発行

森光 由樹  長野県に生息しているニホンザルのミトコンドリアDNAを分析したところ、今まで5つのタイプが見つかりました。しかし、採取したDNAサンプルは捕獲個体を中心に採取したものだけでした。 捕獲の難しい地域に生息しているサルのDNA情報は未だに不明です。そこでDNAサンプルが不足している地域、北アルプス後立山、針ノ木岳周辺を探索してサルの糞拾いに行ってきました。糞にはその個体の細胞が混じっています。DNAを抽出し分析することが可能です。  長野県大町市JR信濃大町駅から車で約30分で扇沢に到着します。扇沢は富山…

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No.30 クマの捕獲は同調(synchronize)する?

2005年01月発行

片山 敦司  2004年の秋はクマ騒動で大変だった。近畿圏で学習放獣や錯誤捕獲の対応を請け負っているのだが、私の所属する関西分室(4名)で扱ったクマの頭数は100を超えた。  単にクマが出たと騒いだ件数ではない。クマに麻酔をかけ、安全な場所で放獣するまでの作業である。「体重が100kgを越えるクマが直径4mmのワイヤー(くくりわな)に掛かって暴れている。ワイヤーが切れそうです」。「建物にクマが入り込んだのでシャッターを下ろして閉じこめた。なんとかして」。そんな通報が続くと、鈍感な私でも少し頭がくらくらした。  ばた…

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No.29 毎年恒例、秋のシカ糞闘記

2004年12月発行

横山 典子  今年も、長い長いシカの糞探しの旅が行われた。糞探しの旅とは、尾根を5kmずっと下ばかり見て歩いてシカの糞塊を探し、生息密度の指標を求める調査のことだ。 今年は、いつもの福井県、徳島県、兵庫県、滋賀県に加えて、長野県でもシカを直接目撃しカウントする区画法調査があり、まるまる1ヶ月の巡業生活だった。終わってしまえばあっという間であったが、本音をもらせば、始まる前少々憂鬱な気分であった。 というのも、今年は巡業生活に入る前に、山をモリモリ歩く機会が無く、体力が心配だった。いつもの巡業メンバーに久々に会い、運…

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No.28 おサルもいろいろ

2004年09月発行

名矢 結香  先日、神奈川県湯河原町から静岡県熱海市にかけて生息しているP1群というサルの調査へ行きました。このサル達はなかなか大胆に市街地を通るという話は聞いていましたが、今回それを目の当たりにしました。  その時私はサルに装着された発信機の電波を追って、車を運転していました。赤信号で待っていると、頭上の木の枝がガサガサッとゆれ、数頭のサルが民家の屋根に飛び降りるけたたましい音と喧嘩する声が聞こえました。慌ててサルの向かった先へ車を走らせると、ちょうど1頭のメスが県道75号をわたっているところでした。この県道は湯…

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No.27 逃げないサル

2004年09月発行

吉田 淳久  野生動物に出会った時には動物との距離を見定めなければならない。よく観察するためには出来るだけ近づきたい。しかし近付き過ぎれば逃げてしまう。また、安全のためにある程度動物たちにこちらの存在を認識してもらうほうが良い場合もある。 そんな駆け引きをしながら、動物に気付かせつつ逃げない所まで距離をつめていく。これがなかなか楽しい。しかし、餌付けされている動物ではこれを味わえない。  先日某所のモンキーパークを訪れる機会があった。そこは餌付けされたニホンザルが半(?)野生で生活している。その公園内を歩いていると…

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No.26 追伸:冬にも昼寝をするサル

2004年08月発行

写真はこの調査雑記No.21と同じ調査中、足尾町通洞群が渡良瀬川の切り立った左岸にやってきたときのもの。死んだように崖に伏せたり、堰堤の上でまるで人間の子どものように眠るサルたち。この場での安全確保によほど自信があるのでしょう。サルは冬でも昼寝はするようです。 (岸本真弓) 20040824_zakki263.jpg

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No.26 昼寝するサル

2004年08月発行

瀧井 暁子 8月も半ばを過ぎました。7月から続く酷暑はまだ衰えを知らず、昼間は体ごと蒸し器に入れられているような暑さです。 丹沢のサルも、暑いようで昼間はどこかの谷間の沢沿いで涼んでいるようです。サルの捕獲を試みている最中、昼寝するサルをたびたび見かけました。 写真のサルも、眠っています。不自然な格好に見えますが、この姿勢がこのサルのお気に入りなのかも。まわりのサルががさがさ動き始めて他の場所に動いたのに、このサルだけはコナラの枝に座って昼寝です。  つい2週間前は、熟睡しているサルを見ました。残念ながら写真に撮れ…

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No.25 鹿糞百態

2004年08月発行

岸本 真弓  昼間はセミの大合唱に暑さが変わらぬ思いになるが、早朝には秋の風波がかすかに届くようになった気がする。秋と言えば、秋祭りならぬシカ調査大巡業だ。関西分室ではもう5年以上前から、草が果て足下見やすくなり、狩猟者の訪れる前の時期、10月下旬から11月上旬にかけてシカ糞塊密度調査にでかける。個体数を把握するのが難しいシカの密度指標を得るためのモニタリング調査である。昨年は、福井県、徳島県、兵庫県、滋賀県と渡り歩き、約20日間の調査だった。  糞塊密度調査とは、山の尾根を歩いて糞塊数を数えるという単純なものだ。…

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No.24 落とし穴

2004年08月発行

岡野 美佐夫  数年前、関東のとある県で調査をしていたとき、畑の縁に落とし穴を見つけた。子どもが空き地や砂浜で作るような無邪気でお粗末なものではなく、小型ユンボか何かを使った本格的なもの。大きさは2畳ほどで深さも2m前後。機械で掘った後、回りは間伐材を使って土留めし、その上にトタン板を張って足がかりをなくしてある。 上にビニールシートをかぶせ落ち葉を敷き詰めてカムフラージュした、正真正銘の落とし穴だ。この落とし穴のところを除き、畑の周囲は網で囲われているので、中に侵入しようとする獣はここを通らないとならない。用意周…

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No.23 サルを利用する(?)シカ

2004年05月発行

岸本 真弓  5月20日、京都市と滋賀県大津市の境、比叡山延暦寺。標高700m、心地よいひんやりとした冷気が漂う。ややガスがあり、木々の緑がしっとり美しい。  駐車場の脇に植えられた桜の、ほんのり赤く染めた頬を寄せ合うかのごとく実が何十組、何百組と、葉に見え隠れする。  カリッ、コリッ、コリコリッ。あちこちで音がする。サルがその実を食べているのだ。そこへシカの親子がやってきた。お母さんと今年1歳になったオスジカ。シカの親子は桜の葉を食べながら駐車場の縁を移動。徐々にサルに近づく。サルは気にしている風でない。  サル…

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No.22 丹沢にて

2004年05月発行

横山 典子  去年は、シカ調査のおかげで丹沢山地の主な山を登ることができた。  生まれが福岡で大学は島根である私は、西日本の山しか登ったことがなかった。福岡にいたときは、家族でよく山登りに行った。北部九州のいろんな山を登ったが、標高1000mを越える山に登ったのは九重連山に登ったことがあるだけである。九重は家から遠いこともあって、朝早く出かけて家族の一大イベントのようなかんじで、気合をかなり入れて行っていた。  しかし、丹沢では1000mを越える山は普通にそこにある感じで、普通に標高1000m以上の場所で調査をした…

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No.21 切ない夕暮れ -サルとわたし-

2004年03月発行

岸本真弓  約10年ぶりに栃木県足尾を訪れた。2年前の2月のことである。 以前は足尾にWMOのステーションがあり、集中してシカやカモシカやクマの調査をしていた。定点調査で初めてカモシカをじっくり見たのは足尾鉱山だった。何十頭というシカが集結しているのを初めて見たのも足尾の三川合流部だった。(関西ではお目にかかれない)落葉広葉樹林が連なり織りなす紅葉の海を初めて見たのもクマを追っていった先だった。あの頃、足尾でサルの話なんか聞いたかな?  サルはいた。5日間の追跡調査中、ずっと足尾の町の中にいた。公園でくつろぎ、商店…

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No.20 そこはイノシシパラダイス

2004年03月発行

名矢結香  先日、神戸の六甲山のイノシシ調査に行く機会があった。噂にはきいていたが、そこは想像をはるかに上回るイノシシの楽園だった。  WMOでは六甲山でイノシシの通るケモノ道に有刺鉄線を張り、イノシシの体毛の採取を試みている。その毛からDNAの抽出をして個体識別をし、個体数の算出をしようという、遺伝研究室泣かせの壮大なプロジェクトだ。  その日はその有刺鉄線 – ヘアートラップ – の見回りを行う予定だったのだが、トラップの場所まで来て驚いた。閑静な住宅街からほんのすこし林に入っただけなの…

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No.19 森の下っ端運び屋

2004年03月発行

吉田淳久  ツキノワグマの生息密度を調査するのに、ヘアートラップ法というのがある。木の間に蜂蜜をぶら下げ、その周囲2,3m四方に有刺鉄線を張り、やって来たクマの”毛”を採取してDNAを調べるのである。 先日、蜜の交換に行くとトラップは破壊され、蜜は無くなり、木にはクマの爪跡がはっきりと付いていた。有刺鉄線に付着した毛も大量!少し興奮気味に毛の採取と蜜の交換作業を始める。しかしクマの存在を実感しての作業は、いつもより周囲の音や気配に敏感になる。なにせ大好きな蜂蜜を配達しに来ているのだから。カバ…

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No.18 イノシシの痕跡

2004年03月発行

河内紀浩  山を歩いていると樹皮がなくなり、白くなっている木を見ることがある。よくよくみると毛がたくさんその木に付いていて、毛はまだら模様で、枝毛になっている。この毛はイノシシである。 イノシシは体をすりすりと木などにこすり付ける習性がある。しかし、なんぼイノシシでも体を擦りつけただけではこんなに激しく樹皮がはがれないだろうと思い、細かく見てみると、牙跡も発見、しかもどう見ても立ち上がって牙で削っている場所もある。何で、立ち上がるのか不思議で仕方ないけど、わからん。 いつか、こんな姿を見てみたいと考えつつ、今日も山…

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