フォトブログ一覧
No.135 里狐
清野 紘典 近頃、里でキツネの姿をみる機会が増えている。 狩猟統計をみると、キツネの捕獲数は年々減少傾向にある。 捕獲の対象から遠ざかっているキツネは、ひそかにその数を増やし里にあふれているのかもしれない。 写真は2010年6月に滋賀県で撮影。 20110218_satogitune.jpg
No.134 氷柱の歯(行く手を阻むもの3)
岸本 真弓 冬季は閉鎖されている四国剣山スーパー林道に許可を得てシカ調査にでかけた。標高があがるにつれ寒さが冷たさに、痛さに変わっていく。1,550mで剣山トンネルに到達。車のライトに照らされた内部には氷柱が牙をむいていた(写真上)。ゆるゆる車を進めるが、最大の難所では、路面にも氷の丘ができ、何かの刺激で無数のナイフが振ってきそうだった。 帰る日、テレメ個体を探してもう一度トンネルまで行った。残念ながらトンネル手前では受信できなかった。トンネルを越えたかった。氷柱は歯から格子へと形を変えていた(写真下)。歩い…
No.133 王蟲?
岸本 真弓 紀伊半島の大台ヶ原、シカの影響によってスズタケが退行している。元はスズタケがびっしり地面を覆っていたのだという場所を歩いていると、そのことを窺わせる残骸が残っていた。よく見るとどこかで見たような形状。 フィルムカメラの写真を探したら出てきた。竹の根っこ。『風の谷のナウシカ』の王蟲のモデルは絶対コレ、とひとり思ったものだ。 王蟲は新しい生態系の構成種である。スズタケの残骸は何を物語っているのか。 20110128_omu.jpg
No.132 ●の恋路を邪魔する奴は
岸本 真弓 鉄塔の下から、一本向こうの鉄塔の足もとを見る。肉眼では茶色い点にしか見えないが、10倍ズームのカメラはそれがサルであることを捉える。仲間から離れてふたりだけの世界にいるようだ。 しばらく覗いていたら、私に気づいてギロリと睨んだ。・・・ような気がした。こんなに遠くても見られるのは嫌らしい。 20101210_koiji.jpg
No.131 秋の香り
川村 輝 秋に入っても猛暑から抜けず、頭も溶けてしまいそうな暑さが続いていた。 サルを追って谷戸状の公園内を歩いていたら、綿あめの様な甘い香りが鼻先をかすめた。 覚えのある香りに、周りを見回すとまだ青々としたカツラの木があった。足元をよく見ると黄色くなった葉や茶色く乾いた葉が落ちている。まだまだ先と思っていた落葉が始まっていたようだ。 カツラの葉を拾ってみると黄色い葉はあまり香りはしないが、茶色く乾いた葉は甘い香りがする。この甘い香りの正体はマルトールなのだそうだ。マルトールは糖類を熱分解した時に生成され、カラメ…
No.129 山を割る (行く手を阻むもの2)
岸本 真弓 尾根を歩いてシカの糞塊数を数える糞塊密度調査。下を向いて歩いているが、ときどき顔をあげた目線の先がなんとなく明るい時には、嫌な予感がする。 案の定、林道が尾根をぶった切っていた。現代のモーゼは、人を通すために山を割る。仕方なく、小股でチビチビ法面の縁を歩いて降り、向かいの尾根までまた登り返す。そんなことをやっているのは、私だけではないようだ。こぼれ落ちたシカの糞からため息が聞こえてくる。 20101022_yamawowaru.jpg
No.128 ピラミッド? (行く手を阻むもの1)
岸本 真弓 本フォトブロNo.127で紹介した小豆島のシシ垣を日本版“万里の長城”と呼ぶ人もいるという。ならば、これは日本版“ピラミッド”? いや、積んだという点ならシシ垣の方が“ピラミッド”かもしれない。 シカの糞を数えながら、尾根を登っていったら、目の前に立ちはだかった(上図)。2年前には別の会社の人が調査した場所のはずなんだが・・・ 小豆島大阪城石垣石切丁場跡の近く。平成の石切丁場、まだ石切中である。仕方なく、縁の尾根を登って調査したが、高所恐怖症の私には足のすくむ風景だった(下図) 20101008_…
No.127 小豆島のシシ垣
岸本 真弓 小豆島のシシ垣は、わが国最大規模と言われている。獣害対策のために江戸時代から作られ、総延長120kmもあったらしい。有名なのは池田町長崎の尾根上にある幅0.6m、高さ1.6m、延長200mの土壁垣で、観光名所にもなっている。 小豆島は石の島でもあり、大阪城の石垣を切り出したことで有名だ。 シカの調査で小豆島を訪れた際、調査地内でいくつかの石垣のシシ垣を見た。現在の里に近いところもあれば、近年足を踏み入れた人は何人か?と思うような山奥深くにもあった。食べることに全精力をかけてくる野生動物に対して、…
NO.126 紅(べに)
岸本 真弓 シカの調査で山を歩くとき、調査地はシカが問題になっている地域が多いため、すでに植生は変化してしまっている。 春、イノシシ調査で鳥取の山を歩く。アオキに出会う。シカが増えてきたら一番に姿を消す植物のひとつだ。おちょぼ口に指した舞妓さんの紅のように、実が色づき始めていた。いや、さしずめ現代なら、爪先のみを色づけたネイルアートか。 鳥取の山、いつまでアオキを愛でることができるだろう。 20100908_beni.jpg
NO.125 続々・無防備な動物
加藤 洋 アナグマは、無事道路を渡りきった。私が行き交う車両に合図を送り、アナグマが道路を渡りきるまで皆様に待っていてもらったのだ。 あまりに、無防備なアナグマ。やはり、先程覚えた違和感が気になる。そっと近づき、確認してみた。側溝に倒れ込んでいる。激しい呼吸音。眼球は両方とも白内障様の状態を呈している。どうやら視力は殆どないようだ。外傷は認められない。毛並はまずまずなのだが、かなりの老齢なのだろうか。あるいは、既に一度轢かれていたのか・・・。 野生動物は、野生に生きている。我々が感知し得ない様々な事情により、…
NO.124 決死の脱出
岸本 真弓 檻を用いた捕獲では、錯誤捕獲が避けられない。餌の工夫や、トリガーの調節でなんとか低減を目指すが、それでもやっぱり目的外の種が捕獲されしまうことがある。その際には速やかに放獣してあげなくてはならない。 アライグマ用の捕獲檻にイタチが捕まっているのが遠目に見えた。たぶん捕獲直後は大暴れだったのだろうが、力つきたか、小休止か、静かにしていた。放獣してあげようと檻に近づくと、逃げようと俄然必死になりだした。何度も試みたはずだろうが、もっとも大きな目から、抜けだそうと体を突き出した。「えーっ 無理だよ。今扉…
NO.123 初夏の実り
川村 輝 初夏の時期、クワは実りの時期を迎える。普段山いて下に降りてこないサルの群れもクワの実を求めてあちこちで畑近くに降りてくる。 お昼休みのささやかなデザート、季節の恵みを舌で実感する。この日のメニューはクワ杏仁。まぁ何のことはない。コンビニ杏仁豆腐に摘みたてのクワの実をたっぷり乗せるだけだ。 動物たちは良くも悪くも作物が一番おいしくなる時期をよく知っている。人間はスーパーに行けば季節を問わず野菜が並び、時折季節感を見失う。旬のものは栄養価も高く、美味しく、しかもありがたいことに安い。わざわざ高価なハウスも…
NO.122 続・無防備な動物
加藤 洋 先程怒らせてしまったアナグマ。居心地が悪くなったのか、のそのそと移動を開始した。「邪魔しちゃったかな・・・」と反省しつつも、あまりに無防備なアナグマに対し、少し違和感を覚えた。後肢がややふらついている・・・。 あ、あぶない!!(続く) 20100824_d2.jpg
NO.121 柵によるシカの惨死
姜 兆文 ニホンジカ(以下はシカとする)の白骨(頭が柵に絡まって死亡、写真1)、別のシカの白骨(角が柵に絡まって死亡、写真2)、最後にシカの死体(角が柵に絡まって死亡、皮はまだ新鮮で、肉の殆どは食べられていた、写真3)。これは私がシカの調査をするため、ある日、山に設置された柵沿いに歩いた時撮影した「シカ」の写真である。皆さんはこの写真を見たら何を考えるでしょうか。私は悲惨な世界だと思った。柵内植林の樹齢により、その柵は20年前に植林した時、幼樹を保護するため設置され、現在まったく防護機能がなくなったと思われる。 …
NO.120 何かご用?
岸本 真弓 夕方、車道の脇でうつむいて熱心に落ち葉をかいているアナグマを見つけた。車を近づけると、アナグマはあっと言う間に地面に消えた。消えたあたりを歩きまわると穴があった。 この中に入ったに違いない。のぞき込んだり、ライトを照らしたりしてみると、主が顔をだした。 「何かご用?」というふうに。 20100816_nanikagoyoujpg.jpg
NO.119 シシガミ様の御力か。
横山 典子 とある調査地に出かけたときのこと。 びっくりした。軽トラが森に帰ろうとしている。 日本は、温暖で湿潤な気候のおかげで、土壌中の微生物の活動もほどよく活発で、土壌が発達し、例え伐採をしてしまっても土壌に養分が蓄えられているため、すぐに草が生え、少しずつ木が生え、森になるスピードが速い。 一方で、生物多様性が最も高い熱帯雨林(正式には熱帯多雨林)は、意外にも土壌の発達が良くない。熱帯雨林は、分解者も非常に多く、また気温も高いので分解速度が非常に速く、落葉や腐植の層がほとんどない。また、養分は土壌に蓄…
NO.118 宴のあと・・・
川村 輝 9月末、集落を抜けた峠道。サルの発信機の入力を追って車を走らせていると道路一面に植物の破片が広がっていた。 車を降りてみてみるとヌルデの虫えいが道路一面にバラバラと散らばっている。 残念ながら周辺にサルの姿は無く去った後のようだった。 ヌルデの虫えい※1は大きな金平糖のような形をしていて割ると中は空洞だ。ヌルデシロアブラムシによる虫えいでタンニンが含まれている。加熱乾燥させたものは五倍子(ごばいし)、付子(ふし)と呼ばれ薬用、染色に使われる。染めものでは空五倍子色(うつふしいろ)とよばれる灰色の染料とな…
NO.117 燕岳-出会い-
山田 雄作 以前の調査雑記で燕岳の写真を紹介しました。今回は燕岳で遭遇した動物を紹介します。 感動的な出会いは目当てでもあったライチョウです。ライチョウは特別天然記念物として有名で、高山に行ったからといって簡単に出会える鳥ではありません。その生息地は高山帯に限られており、生息環境の変化や感染症などによる個体数の減少が懸念されています。この鳥は、苦労して高山へ登っている人達のマナーのおかげで(追い掛け回したりしないため)比較的近くで遭遇しても追い回したり近づき過ぎなければあまり逃げません。その生息数は減少傾向にあ…
NO.116 無防備な動物
加藤 洋 ある日の野外調査中、路肩に変な生き物がいるのに気が付いた。アナグマだ。歩道でのんびり日向ぼっこしている。真横に立っても、毛繕いに夢中。・・・こちらに気付いていない。調子にのって頭をツンツンすると、流石に怒ってしまいました。ごめんなさい。 20100804_2010.8.4.jpg
NO.115 棒を持ち歩くシカ!
姜 兆文 これは赤外線センサー付自動撮影カメラで撮影された、棒を持ち歩き、振り回すオスジカの写真です。カメラを11月に設置し、撤収した1月まで、写り撮り続けたのです。おそらく、角が自然に脱落する5月までそのままでいるのではないでしょうか。皆さんはこの写真を見たら何を考えるでしょうか。格好良い?かわいそう?苦しい?……。私は悲しいと思った。おそらく、シカの角に絡まったのは、各地に設置したシカの防除柵に使われた物の一部と考えられる。幸いこのシカは柵から切り離されて、脱出できたが、出来ない場合は、餓死しかないと思う。例…